ありの巣 松本篤造
新しい巣穴から、
ありがあとからあとから出て来る。
どのありも自分の頭ほどの
土をくわえては入口の外へ出す。
どのありもいそがしそうだ、
それで、
いかにも楽しそうだ。
そうだ、
ありたちはうれしいのだ。
早くその新しい、
大きな御殿へ入りたいのだ・・・・・。
大きな広間がある。
真中に円柱が二三本立っている。
その室の中には、
涼しい色の夏の衣装が、
軽げにかかっている。
料理部屋がある、
いい香りのする、
つやつやした、
花蜜の樽がある、
すみきった
ぼたんの露の瓶もある・・・・・。
そんな御殿を作るためだもの、
ありは楽しいのだ、
いそがしいのだ、
お日さままで真上で、
にこにこ見ていらっしゃる。