月夜の家 北原白秋
こわれたピアノに、
こわれたいす、
誰が月夜に弾いててか、
誰もいもせず、音ばかり。
白いむくげに、
青硝子、
母様もしかと来て見ても、
中には月のかげばかり。
ときどき光る、
目が二つ、
黒い女猫の目の玉か、
それともピアノの金の鋲。
こわれたピアノに、
こわれたいす、
誰が弾くやら泣くのやら、
部屋には月のかげばかり。
空には七色、
月の暈、
いつまで照るやら、照らぬやら、
こわれたピアノの音ばかり。
赤い鳥代表作集 全三巻(初期、中期、後期)の中から、”童謡の部”に書かれている詩をアップしています。
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