2007年8月29日水曜日

夕顔

夕顔    西条八十

去年遊んだ砂山で
去年遊んだ子をおもう。

わかれるぼくは船の上、
送るその子は丘の上。

船の姿が消えるまで、
白い帽子をふってたが。

きょう砂山に来てみれば、
さびしい波の音ばかり。

あれほど固い約束を、
忘れたものか、死んだのか。

ふと見わたせば磯かげに、
白い帽子がよぶような。

かけて下りれば、夕顔の、
花がしょんぼり咲いていた。

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